ウラジオストク空港は中心街から北東へ約50キロのアルチョームという近郊都市に位置しており、市内との交通アクセス手段には電車(アエロエクスプレス)、バス(マルシュルートカ)、タクシーが挙げられる。ウラジオストクはロシア極東随一の国際空港であり、日中韓などからの国際線が多数乗り入れているのだが、市内と空港を結ぶ公共交通機関は驚くほど少ない。空港発ウラジオストク行きのアエロエクスプレスに至っては、終電が17時45分(2020年現在)という早さである。

よって、夕方以降、ウラジオストクに到着した場合、市内への現実的な移動手段はバスまたはタクシーに限られる。今回は私が2018年9月末にウラジオストク空港からウラジオストク駅までミニバス(マルシュルートカ)を乗車した時のちょっとした記録を、豆知識やエピソードを織り混ぜて紹介したい。

この日の昼下がり、私はブラゴヴェシチェンスクを15時50分に出発したオーロラ航空のプロペラ機に搭乗し(所要約2時間20分)、夕暮れの19時10分ごろ、ウラジオストク空港に降り立った(なお、アムール州と沿海州の間には1時間の時差がある)。コートが必要なほど肌寒かったアムール州やハバロフスク州に比べて、札幌とほぼ同じ緯度にあるウラジオストク空港は随分と温暖だ。

手荷物を受け取って空港ターミナルを出たのは午後7時30分。韓国や中国から来たと思われるアジア系の観光客が随分といるが、彼らが市内へ向かうバスやタクシーを探しているような様子は全然ない。旅行会社やホテルの送迎、あるいは現地在住の友人でも待っているのだろうか。

かくいう私はターミナルを出るなり、タクシードライバーが笑顔ですぐに寄り添ってきて、

「ディスカウントプライス!」

と、スマホの電卓で「1000」(ルーブル)の数字を叩き出してきたのだが、訪問当時の日本円換算で約1600円。特段に割安という訳ではなく、ここではごくごく平均的な価格だ。もっとも、3人以上の利用であればバスの料金(1人330ルーブル)とほぼ同じ。4人ではタクシーの方が割安になる。2人で乗るにしても、目的地まで直行できることを考えると、さほど割高感はない。

ちなみに空港の到着ターミナルにあるタクシーブースで公認タクシーを頼むと片道1500ルーブル(約2400円)になる。この日の深夜12時ごろに到着したホステルの同室者のひとりは公認タクシーを利用してきたと言っていた。ルーブル札を持っていなかったそうだが、幸いにもホステルのスタッフに立て替えてもらうことができ、翌日返したとのこと。

空港のバス停には107番「ж/д вокзал」(ロシア国鉄ウラジオストク駅の意味)と書かれた紺色のミニバス(マルシュルートカ)が止まっていた。しかし、客室の数少ない座席は旅行者ですべて埋まっている。乗れるかな…。

すると、いかにも穏やかそうな人柄の壮年ドライバーが、

「一番前の席が使えるよ」

という。つまりは運転席の隣である。これは運がいい。

スーツケースは車両最後尾のトランクルームに預け、横にもうひとりの青年が座ったところで、車内すべての席が埋まった。

午後7時40分ごろ、ウラジオストク空港のバス停を出発。後で調べてみたところ、午後6時以降の空港発駅行きのバスは1時間おきのはずで、今日の最終便は午後8時(※2019年以降、午後10時発の便が追加設定された模様だが、空港のウェブサイトには記述がない)。よって、このバスが増発されたものなのか、満席になったから定刻よりも早めに出発したのかはよく分からない。

ともあれ、増大しているはずの需要に対して、ウラジオストク空港と市内を結ぶバスの本数や輸送力は驚くほど少なく、しかも終発時刻が非常に早い。市内行きのバスが割合頻繁に運行されているハバロフスク空港やユジノサハリンスク空港との違いは何であろうか。

それはさておき、バスは自動車専用道路に入ると、程なくして次のジャンクションがあり、道路標識にはウラジオストクまで右折22キロ、ナホトカまで直進144キロと表記されているのが見えた。市内までの距離が随分と短いなと思ったら、これはウラジオストク市の境界線までの距離らしく、そこからさらに中心街まで25キロほどあるらしい。

しかし、ウラジオストク空港からナホトカまで約145キロとは結構な距離である。これは札幌から旭川郊外(永山付近)までの距離に匹敵し、バスだと片道3時間くらいはかかりそうだ。地図でパッと見た感じではさほど遠くないように思え、時間があればふらっと日帰りでウラジオストクからナホトカに行こうかと思っていたのだが、これは中々厳しそうである。

午後8時半ごろ、週末でやや渋滞気味の車窓からウラジオストクの街並みが見えてきた。素晴らしき前面展望。アパートの縁を彩る電飾が随分と派手である。

ウラジオストクの中心街に入り、高層ビルの沿海州政府庁舎が見えてきた。終点は近い。

午後8時40分過ぎ、ウラジオストク駅前に到着した。運賃は330ルーブル(日本円換算で約530円)。バスを降りたのはちょうどレーニン像の前。韓国人観光客のグループが像の前で記念撮影をしている。

道路を挟んだ向かい側にはシベリア鉄道の起点・終点であるウラジオストク駅。空港行きのバスは駅舎側から出る。

今晩の宿はウラジオストク駅から北へ300メートルの場所に位置するホステル「バルバドス」(現在はオプティマムに改称)。沿海地方国立美術館の真向かいに位置し、中心街のランドマークである州政府庁舎にも程近い。

今日の昼過ぎにアプリでこの宿を見つけ、とりあえず様子見に1泊だけ予約を入れておいた。1930年代に建てられた8階建てのビルの一角にあり、入口を見つけるのに少し手間取ったが、雰囲気はなかなか良さそうである。


ウラジオストク空港連絡バスいろいろ

さて、ここからは余談になるが、このホステルの本棚には誰かが寄贈したであろう「地球の歩き方 シベリアとサハリン 2006〜2007」が置いてあった。昔の様子はどんな感じだったのだろうと、ウラジオストクの章を読んでいると、何と当時はウラジオストク空港と市内を結ぶバスはなかったとのこと。この一節は中々衝撃的だったのだが、2000年代半ばまでは空港から中心街までを公共交通機関で直接結ぶという発想自体がなかったようで、現在の空港連絡バスの少なさに通じるものがある。

この空港は前述したように、ウラジオストク郊外のアルチョーム(Артём)に立地しており、空港とアルチョームバスターミナル(Автовокзал Артём)を結ぶ7番バスが午前7時30分から午後8時30分までの30分おきに運行されている。アルチョームのバスターミナル(鉄道駅とはまったく別の場所)ではウラジオストク行きのバス(205番、506番など: 運賃110ルーブル)に乗り換えることが可能だ。

あまり万人向けなルートではないかもしれないが、2000年代半ばまではアルチョーム経由がもっとも一般的だったらしく、ホステルで同室だったひとりが、空港からアルチョームを経由してウラジオストク駅までやってきたと話していた。

その他、公式ウェブサイトによれば、ウラジオストク空港からはナホトカ、ウスリースク、アルセーニエフ、ダリネゴルスク、スパッスク・ダリニー行きなどの直通バスが出ている。