極東・沿海地方

初めてのウラジオストク観光

ロシア極東最大の港町ウラジオストクは人口約60万を擁する沿海地方の首都。アムール湾とウスリー湾に挟まれたアムールスキー半島の先端に位置しており、天然の良港に恵まれている。札幌からウラジオストクまでの直線距離は約770キロ(東京よりも近い)、緯度もほぼ同じ北緯43度に位置しており、地理的な要因やロシア風の街並みから、しばしば「日本に一番近いヨーロッパ」と称される。

ウラジオストクは1860年に軍港として開かれて以後、日本や中国などから多くの貿易商が移り住み、20世紀前半までに帝政ロシア様式の街並みが形成されたという。1922年以降はソ連政府の管理下に置かれ、1958年から1992年までは外国人の立ち入りが事実上不可能な閉鎖都市となった。

自由貿易港に指定されて以後は観光地として脚光を浴びるようになり、特に近年は電子ビザ(査証)制度を利用してこの地を訪れる外国人観光客が急増していた。特定の観光スポットや飲食店に外国人観光客が群がる光景を滞在中に何度も目の当たりにし、オーバーツーリズムの兆候さえ感じられたほどである。


ウラジオストクの現況

2020年春には東京成田とウラジオストクの結ぶ日本航空(JAL)や全日空(ANA)の直行便が新規就航。それと前後して関西や新千歳からの直行便も設定され、さらに数社の航空会社が日本とウラジオストクを結ぶ路線に参入する予定であった。

しかしご存知の通り、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行によってウラジオストク発着の定期国際航空路線は全路線が運休。現在、ウラジオストクを含むロシアへの外国人観光客の渡航は事実上不可能となっている。

2020年8月現在、ウラジオストクを含む沿海地方では連日80人前後の新型コロナウイルス感染者が報告されており、現時点において今後の渡航再開見通しを予測することは極めて困難である。よって、渡航が再び可能になった折には状況が変化している可能性があるので、最新情報に留意してほしい。


オンライン宿泊予約

ウラジオストクの宿

ウラジオストクのホテルやホステル、ゲストハウスは大半がBooking.comに登録されており、宿泊予約には事欠かない。国際水準の高級ホテルは少ないが、割安かつお洒落なミニホテルやドミトリー、カプセルホテルが非常に充実している。交通の利便性が高く、主要な観光スポットまで歩いていける中心部の宿がおすすめだ。こだわりがあれば夜景や海を見渡す宿、飛行機で夜遅くに到着する場合は空港内やその周辺の宿を利用する手もあろう。

Booking.com

モデルコース

初めてのウラジオストク散策

  • 起点: ウラジオストク駅

  • 終点: 鷲の巣展望台

  • 移動距離: 6km

  • 所要時間: 約5時間

  • 最適な季節: 通年


START: ランドマーク

ウラジオストク駅

Железнодорожный Вокзал Владивосток / アレウツカヤ通り ул. Алеутская 2 / 24時間

シベリア鉄道東端の起終点として名高いウラジオストク駅。ネオ・ロシア様式の駅舎は帝政ロシア時代末期の1912年に古典的な宮殿をイメージして建てられ、街を代表するランドマークとなっている。

モスクワやハバロフスク方面への長距離夜行列車や近距離列車(エレクトリーチカ)、ウラジオストク空港からのアエロエクスプレスや路線バスが発着する交通の要衝として賑わっており、プラットフォームにはモスクワからの距離(9288km)を示すキロポストが立つ。

クルーズ船が発着する海の駅(Морской вокзал)と直結した跨線橋からは丘陵地帯に開けたウラジオストクの新旧混沌とした街並みを見渡すことができ、鉄道ファンならずとも一見の価値がある。

NEXT ›› ウラジオストク駅を出て右手に進み、アレウツカヤ通りの緩やかな坂道を300m歩く。


ミュージアム

沿海地方国立美術館

Приморская государственная картинная галерея / アレウツカヤ通り ул. Алеутская 12б / 11am-7pm / 月曜休 / ₽500 / primgallery.com/glavnaya

14世期から20世紀までに描かれたロシアとヨーロッパの絵画を展示する美術館。ハバロフスクの極東美術館と比べて展示数はだいぶ少なく、沿海地方に関連した芸術作品を鑑賞できる機会も限られている。その分、企画展示には力を入れているようだ。初めて訪れるウラジオストクでロシア芸術の一端に触れてみたい人向け。

沿海地方国立美術館の向かいには俳優ユル・ブリンナーの生家(Yul Brynner’s Mansion)と彼の銅像、1940年にスターリン洋式で建築されたウラジオストクで最初の本格的なアパートメント(Gray Horse and House with Bayonets)が建つ。

NEXT ›› アレウツカヤ通りの坂道を下ると1983年築の沿海地方行政府(別名ホワイトハウス)が見える。この反対側に位置するのが沿海地方博物館。交差点の地下歩道を左手に進んだ先に博物館の入口がある。


ミュージアム

アルセーニエフ記念沿海地方博物館

Музей истории Дальнего Востока имени В.К. Арсеньева / スヴェトランスカヤ通り ул. Светланская 20 / 10am-7pm / ₽500 / arseniev.org

1890年にアムール地方社会研究博物館として開かれたのが始まりで、1977年に現在の建物(1904年築)に移転した。沿海地方に関連する約60万点のコレクションを有しており、かつてこの地に存在した渤海国の埋蔵文化財や先住民族の生活用具が興味を惹く。展示解説は基本的にロシア語のみだが、企画展では日本語を含む多言語のリーフレットを配布している。

NEXT ›› 博物館からアレウツカヤ通りをさらに1区画北に進む。途中、左手にKFC(ケンタッキーフライドチキン)の店舗がある。


散策路

噴水通り

アドミララ・フォキナ通り ул. Адмирала Фокина

中心街からスポーツ湾に向かって西へと伸びる、市内でもっとも賑やかなプロムナード。噴水が配された沿道には歴史的建物を活用したショップやカフェなどが軒を連ねており、モスクワの有名な通りに倣って、地元では「ウラジオストクのアルバート通り」とも呼ばれているそうだ。

NEXT ›› 噴水通りの入口からスポーツ湾までは歩いて約5分。沿道にはガイドブックに掲載されているジョージア料理店やカフェが軒を連ねているが、このような店はたいてい観光客で混雑している。



ビーチ

スポーツ湾

Спортивная гавань

噴水通りの終端に位置するスポーツ湾(アムール湾の一角)界隈は地元の人々や観光客で終日賑わいを見せるレクリエーションスポット。20世紀初頭に海水浴場として開かれたところで、水辺のプロムナードに沿って遊園地やフードコートが点在する。アムール湾に沈みゆく夕日の情景が中々美しく、冬は氷結した海面を散策することができる。

NEXT ›› 遊園地に面する海岸沿いのプロムナードを5分ほど歩く。


ミュージアム

ウラジオストク要塞博物館

Владивостокская крепость / バタレイナヤ通り ул. Батарейная 4а / 10am-6pm / ₽200

ウラジオストクやルースキー島を含むアムールスキー半島南部には、19世紀末期から築造された軍事要塞の跡地が100箇所以上点在している。スポーツ湾の海岸段丘に位置するこの要塞は1899年から1901年にかけて築造されたもの。現在は博物館として公開されており、屋外には湾を見渡す砲台や戦車、屋内には1930年代から1990年代までの銃砲や写真が数多く展示されている。ウラジオストクならではの見どころのひとつ。

NEXT ›› 要塞に隣接する水族館オケアナリウムからバタレイナヤ通りを400m進み、聖イゴール聖堂が建つ交差点を右折。さらに1区画先のディナモスタジアム正門で姉妹都市公園を眺めつつセメノフスカヤ通りに入ると、すぐ左手に古いレンガ造りの建物が密集しているのが見える。ここは通称「ミリオンカ(Миллионка)」と呼ばれていた地区で、1870年代から1937年にかけて中国人が多く暮らしており、賭博場や妓楼といった地下社会が形成されていたという。現在はカフェやワークショップとして活用されている。時計塔(旧浦潮日報編集部)が建つ交差点まで400m歩き、中央広場の銅像を遠望しながらオケアンスキー通りの坂道を300m下る。


ランドマーク

中央広場

Центральная площадь / スヴェトランスカヤ通り ул. Светланская 38

沿海地方行政府に隣接する中央広場では週末に市場が開かれ、農作物や海産物、キムチ、ベリーなどを販売するトラックマーケットさながらの露店が立ち並ぶ。三位一体となった銅像は地元の人たちの待ち合わせスポットになっており、市内バスの多くはこの広場を経由する。

広場の背後で建設中だった建物は救世主変容大聖堂(Спасо-Преображенский кафедральный собор)。高さ67m、2000人を収容できる沿海地方最大のロシア正教会で、イスタンブールのソフィア大聖堂を模しているという。


NEXT ›› 中央広場と並行するスヴェトランスカヤ通りを黄金橋の方へ進むと、程なくして左手に1906年築のグム百貨店(ГУМ)があり、近年は通称「グム裏」と呼ばれる周辺エリアがレストランやカフェが連なるナイトスポットとして人気を呼んでいる。グム百貨店から400m先のプリモリエ銀行(Банк Приморье)の向かいに位置するのがニコライ2世凱旋門だ。



ランドマーク

ニコライ2世凱旋門

Триумфальная арка цесаревича Николая / ペトラ・ヴェリコヴォ通り ул. Петра Великого 6

アドミラリスキー広場の木立に佇む凱旋門は、皇太子ニコラス・アレクサンドロヴィッチ(後に最後のロシア皇帝となるニコライ2世)がウラジオストクに立ち寄ったことを記念して1891年に建てられた。外観は小ぶりだが、絵に描いたような可愛らしさがあり、細かい装飾が各所に施されている。ソ連時代の1927年に破壊されたが、2003年に再建された。

NEXT ›› 凱旋門をくぐると太平洋艦隊軍事栄光広場があり、その中心に潜水艦が配されている。


ミュージアム

潜水艦S-56博物館

Подводная лодка С-56 / コラベリナヤ通り наб. Корабельная 9 / 9am-8pm / ₽100

ソ連時代の潜水艦「S-56」(全長77.75m)を保存した、ウラジオストクでもっとも来館者が多い博物館のひとつ。船尾にチケット売り場があり、艦内には模型や白黒写真などの資料のほか、操舵室や寝室が当時の姿を保っている。この潜水艦は太平洋艦隊の軍港に隣接しており、第二次世界大戦中に14隻の「敵船」を撃沈したとのこと。

道路を挟んだ潜水艦の向かいには、1910年に建造された蒸気船の軍艦「紅旗号(Красный вымпел)」が係留されており、入館料50でブリッジを見学できる。

NEXT ›› プリモリエ銀行に戻り、先ほどのスヴェトランスカヤ通りを東へ進む。黄金橋の下を通過していくつかのモニュメントや聖堂を眺めつつ、極東連邦大学(ДВФУ)のキャンパスに沿ってキロチニ通りに入る。徒歩約10分。


歴史的建築物

ルーテル聖ペトロ教会

Лютеранская церковь Святого Павла во Владивостоке / プーシキンスカヤ通り ул. Пушкинская 14 / www.luthvostok.com

1908年に建てられたゴシック様式のルーテル教会は、ソ連時代に破壊を免れた極東でも数少ない帝政ロシア時代の宗教建築物。尖塔を頂いたレンガ造りの外観はウラジオストクでもっとも美しい建物のひとつとされ、ドイツ海外文化遺産に登録されている。同じくレンガ造りの極東連邦大学(1899年築)の旧東洋研究所に隣接。

NEXT ›› 聖ペトロ教会をぐるりと回り、プーシキンスカヤ通りの交差点を左折すると、程なくしてケーブルカーの駅舎が右手に見える。乗車前に駅舎左隣の沿海地方プーシキン劇場(Приморский Пушкинский Театр: 1908年築)、しょんぼりとした姿がちょっとユーモラスなプーシキン像を見ておこう。


ケーブルカー

ファニキュラー

Фуникулер / プーシキンスカヤ通り ул. Пушкинская 29 / 7am-8pm / ₽20

1962年に開業したロシア極東で唯一のケーブルカー。高低差70m、全長183mの単線交走式で、所要時間はわずか90秒だが、「ロシアのサンフランシスコ」と称されるウラジオストクを代表するアトラクションとして人気が高い。開業以来変わらない姿のレトロな車両が使われており、車窓には金角湾の眺望が広がる。

運行時間帯は午前7時から午後8時まで。特に最終便の時刻が早いので、夜景を見るなら上りだけでもこの時間までに乗車することをおすすめしたい。運賃は車内で車掌に直接支払う。

NEXT ›› 鷲の巣展望台はケーブルカーの駅舎終点の向かいに位置する小高い丘の頂上にある。駅舎出口を右手に進んでロータリー交差点(ラウンドアバウト)の下をくぐる地下歩道を通り抜け、展望台へと続く階段を登ろう。



FINISH: ビューポイント

鷲の巣展望台

Видовая площадка “Орлиное гнездо” / アクサコフスカヤ通り пер. Аксаковская 3а / 24時間 / 無料

「鷲の巣」と呼ばれる標高193mの丘の頂上に位置し、天然の良港である金角湾と黄金橋、ウラジオストクの街並みを一望する絶好のビューポイント。天気が良ければルースキー島横断橋やアムール湾を遠望できる。近年は夜景の名所として人気が高い。

CONTINUE ›› ちょっと歩き疲れたなと感じたら、鷲の巣展望台の階段に直結したフニクリョル(Фуникулёр)停留所から中央広場行きの95番バスまたは16Ц番バス(運賃₽28)に乗って中心街に戻ろう。午前6時から午後11時まで8〜24分間隔で運行されている。ここから15番バスまたは29番バスでルースキー島の極東連邦大学や沿海地方水族館に足を伸ばすこともできる。徒歩で中心街へ戻る場合は展望台の麓を下るスハノヴァ通りを歩くとよい(時計塔まで約2km)。