極東・沿海地方

ちょっとディープなコムソモリスク・ナ・アムーレ

造船公園

Парк Судостроительは市庁舎の向かい、文化の家に隣接する中心街で一番広い公園。ロシア語で「造船」の名がついているが、アムール河畔には立地しておらず、船に関するモニュメントが点在している訳でもない。造船所関係者のレクリエーションの場として開園したのであろう。正門は郷土博物館の正面右手にあり、ちょっとした遊園地が設けられている。

木々が生茂る園内の中央には古びた噴水があり、人気は随分と少なくなるが、このような場所でも夜にはライトアップされるようだ。紅葉のプロムナードは曇り空でも美しい。ソ連時代?のユニークなブランコもある。


中央図書館

ペルヴォストロイテレイ通り沿いにある中央図書館(Центральная Городская Библиотека)。ごくありふれたソ連時代の建物で、正面左手の壁には読書をする人たちをモチーフにした鉄製の繊細なレリーフが飾られている。

この図書館にはいくつか特色があり、建物の側面に本の階段を上る少年や、本のページを翼代わりにして飛ぶフクロウなどのユニークが壁画が描かれている。

階段の窓枠にはステンドグラスが埋め込まれているのだが、日中だと外からでは分かりにくい。という訳で、ナディアとともに図書館に入り、受付で承諾を得て内部を見せてもらう。

階段部分は最上階まで吹き抜けになっており、色とりどりの幾何学模様のステンドグラスが太陽の日差しに照らされて輝きを放っている。その光景は美しさとノスタルジーを兼ね備えているようで、単なる社会主義的な装飾ではなく、芸術の域である。

ロシアの図書館に入るのはこれが初めてだが、昼間でも随分と薄暗く、書架は2階から4階までの独立した部屋ごとに収められており、入口から書架がずらりと並んでいる日本の図書館とは随分とつくりが違う。


シェグロヴァの脇道

ナディアがお気に入りというこの脇道。ペレウログ・シェグロヴァ(Переулок Щеглова)は全長わずか300メートルほどに過ぎないのだが、典型的なアパートばかりが目立つ中心街にありながら、可愛らしい三角屋根の戸建て住宅が両側に建ち並んでいるという、コムソモリスクでは異色の場所だ。

クリーム色やピンク色に塗られた家々には1世帯、あるいは2世帯以上が暮らしているそうで、まるでどこかの田舎町にでも来たかのような錯覚を覚える。今はどうなのか外観からだけでは分からないが、規模の大きさや装飾などから、かつてはそれなりに社会的地位の高い人々が暮らしていたのではないだろうか。

脇道は文化の家からトゥルダ通りを西へ約300メートルの場所に位置する。


黄金の秋

コムソモリスク・ナ・アムーレにおける紅葉のピークは9月下旬。まさに私が訪れた時がそうだったのだが、真っ黄色に染まった街路樹と絨毯のように歩道を埋め尽くす落ち葉は、まさにロシアで言う「黄金の秋」ならではの詩的で美しい光景である。

上のような風景は中央図書館の裏手から国立大学まで、団地の中を通り抜ける細い道のりで見られる。

9月下旬のコムソモリスクは既に晩秋の装いだ。道ゆく人の多くは冬さながらにジャンパーやコートを着て、さらに毛糸の帽子を被っている。かくいう私も厚手の上着では到底足りず、ジャンパーを貸してもらった次第だが、それでも肌寒かったほどだ。朝夕の気温は一桁から10度前後。しかし日中は20度前後まで上がり(半袖でも歩ける)、寒暖の差が激しい。


今はなきコムソモリスク・ナ・アムーレトラム

市庁舎の近くで停車中のトラム。道路上に乗降用の安全帯はない。

私がコムソモリスクに到着したのは2018年9月25日。この都市にトラム(路面電車)が走っているのはだいぶ以前から知っていたのだが、ナディア曰く、軌道や車両などの老朽化が著しいことから、今月末で運行を停止するという。これは初耳である。このトラムの撮影を目的にコムソモリスクに来た訳ではないのだが、見かける機会があれば撮影しておくことにした。

今月の残りの日数を数えると、トラムの運行はあと5日しかなく、もはや廃線間近である。もしかすると、私がコムソモリスクの動くトラムを見る最後の日本人旅行者になるかもしれない。

アムール川に面するレチノイ・ヴァグザール停留所。トラムは片運転台なので、終点でループ状のレールをぐるっと一周して方向転換する。

日本であれば、廃線に関するニュースが流れると、各地からにわかに鉄道愛好家などが集まり、近年はどこも大変な賑わいを見せるが、ここではそのような雰囲気は皆無で、トラムの姿を写真に収めるような人は滞在中、一度も見かけることはなかった。

ミーラ通りを走るトラム。

軌道沿いを歩いていると、道路は一直線で遠くまで見通しが利くのに、トラムの姿はなかなか見えず、十数分が経過した頃にようやくやってくるという感じで、本数はかなり削減されているようである。そのためかトラムの乗客はまばらで、車両もよくよく観察していると、ソ連時代から使われているような旧型のものばかりだ。まさに廃線間近の、末期に近い姿という感じである。

そういえば夜行列車でコムソモリスクに着いた時、ホームの目の前にトラムの停留所があったはずなのだが、車両は止まっておらず、存在には全く気付かなかった。

コムソモリスクは元々の道路の幅が極めて広いので、トラムの廃止後に交通渋滞が起こるようなことは考えにくい。この都市では日常の光景と何ら変わりなく、トラムが静かにその役目を終えようとしていた。