極東・沿海地方

初めてのブラゴヴェシチェンスク観光

ロシア極東のブラゴヴェシチェンスク(Благовещенск)はアムール川を挟んで中国と直接相対するという、極めて興味深い場所に位置する都市である。人口約22万人を擁するアムール州の州都であり、19世紀後半に築かれた帝政ロシア時代の瀟酒な街並みがメインストリートに建ち並ぶ。一方で約500メートル先の対岸には中国黒竜江省の一大都市であり、人口約167万人を擁する黒河(Heihe)の近代的な高層ビル群が間近に見える。

「ヨーロッパとアジアの交差点はどこ?」

と聞かれたら、個人的にはブラゴヴェシチェンスクと黒河がもっともふさわしいように思う。

人々の暮らしぶり、文化、言語、建築…。泳いで対岸へ渡れそうな川を挟んで、全くと言ってよいほど異なるふたつの世界が、ここには展開しているのだ。

黒河からブラゴヴェシチェンスクまでフェリーで約15分という近さに加え、双方の住民は査証(ビザ)免除制度が適用されるため、ここで言うまでもなく、中国人観光客や買い物客はそれなりにやってくるが、その数は知れていて、ウラジオストクなどと比べれば随分と穏やかなものである。

私はこの都市に行くまで、

「これだけ中国に近いのだから、ブラゴヴェシチェンスクの街並みは中国資本の影響をかなり受けているのではないだろうか」

などと何となく思っていたのだが、それはまったくの幻想に過ぎなかった。

実際にこの都市を歩き回ってみると、ウラジオストクやハバロフスクなどの大都市とは趣きを異にする、エレガントで繊細な帝政ロシア時代の建物があちこちに点在しているのだ。現代の中国的な賑々しい建物は皆無に等しく、中華料理店や中国人相手の店も数えるほどである。

考えてみれば、多くの中国人はロシア的な要素を求めてブラゴヴェシチェンスクにやってくるのだから、当然といえば当然のことかもしれない。やはり旅というものは一見に如かずだ。

ブラゴヴェシチェンスクはシベリア鉄道のメインルートから約110キロ南に位置している。ウラジオストク方面とモスクワ方面を結ぶ夜行列車が通らないこともあり、中国人を除いて、この都市にやってくる旅行者はあまり多くないという。しかし、シベリア鉄道からベロゴルスクを経てブラゴヴェシチェンスクに乗り入れる夜行列車は多く、ハバロフスクやチタ、あるいはバム鉄道のティンダなどと合わせて訪れることが可能だ。

今回、ブラゴヴェシチェンスクを案内してくれるのは現地在住のジーマ。生まれも育ちもブラゴヴェシチェンスクで、本業はタクシードライバーだが、その圧倒的な知識はプロのガイドに匹敵するほど。現地でも随一の文化人ではないかと思われる(残念ながら現在は海外に転出)。ここでは有名無名の見どころに加えて、この都市ならではの情景を織り混ぜて紹介していこう。



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